THINKING FOOTBALL
佐藤俊太郎のコラム
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第3回 ロスタイム/132秒のドラマ
利の女神とは、いつだって気まぐれだ。 90分間リードしていたチームが最後の数十秒で勝利を失う。 それがフットボールというスポーツの持つ恐ろしさであり、醍醐味でもある。

記憶に新しいのは1998年のチャンピオンズリーグ決勝戦、マンチェスター・ユナイテッド対バイエルン・ミュンヘンの試合。 終了直前の同点、そして逆転弾により、マンUが奇跡の勝利でビッグイヤーを掲げたのだ。 当時のゴールキーパーだったピーター・シュマイケルは、「アンデルセンでもこんなストーリーは書けないだろう」と、自国の伝説的な童話作家の名前を出し、この奇跡を語った。


日本人にとって「ロスタイム」と言う言葉を聞いてまず思い浮かぶのは、あの「ドーハの悲劇」と呼ばれる出来事ではないだろうか。 悲願のワールドカップ出場まであと僅かというところまで迫りながら、イラクに同点ゴールを食らってしまい、望みが絶たれてしまった。 その瞬間、日本中が落胆し、選手たちも唖然としていた。

時を同じくして、フランスもロスタイムの失点によってワールドカップ出場の切符を手中にしながら、寸前で逃してしまった。 1998年のワールドカップで優勝し、今では世界最強との呼び声も高いフランスでさえもロスタイムの魔力にかかってしまうのだ。


先日のユーロ本大会でのイングランド戦、フランスはロスタイムまで1点差で負けていた。 イングランドの選手はもちろん、誰もがフランスの敗北を確信していたことだろう。 しかし、ジダンのフリーキック、そしてPKが立て続けに決まり、フランスは逆転に成功。 時間にして132秒。 たったこれだけの間に全てがひっくり返ったのである。

終了のホイッスルが吹かれるまで何が起こるかわからない。諦めなければチャンスは訪れる。偶然と必然は紙一重なのかもしれない。

2004.6.30 佐藤俊太郎

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